名嘉正八郎『グスク探訪ガイド』

 北は奄美諸島から南は八重山諸島まで、琉球列島に点在するグスクについて、遺構調査の結果や伝説・歴史も交え紹介している。本書に目を通し改めて感じるのはグスクの多様性である。首里城や勝連城のように史跡として整備され往時の姿を偲べるところもあれば、小さな石垣だけが残るところもあり、生い茂る草木の陰にほとんど埋もれかかっているところもある。武力や権威を誇示したというより、生活の中の祈りの痕跡のようにも思える。「城」の漢字を使うことが多いが、本土の城と同じ定義でくくれないグスクも目につく。専門家の間でも、宗教施設とする説、軍事拠点とする説、時代とともに役割が変化したとする説などさまざま。同じグスクという言葉をあてはめても、もともと役割が違っていたのかもしれない。あえて共通点を探すとすれば、変化に富んだ島の地形と海が織りなす眺望の場所に設けられることが多く、自然や時間の流れに逆らわない優しさや奥ゆかしさを感じることだろう。(T)

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