繰り返される琉球処分②

 

 大城立裕著『小説 琉球処分』では、琉球王国の解体を迫る日本政府の横暴さが浮き彫りになる一方、沖縄の政治エリートも一方的な被害者として描かれていない。その多くは、根本的な解決策の先延ばしばかりに執心し、自分たちに好都合になることを願って、事態が好転するのをひたすら待つ。庶民は重税を課され不満を抱きながらも、時代の転換点でどう振る舞ってよいか分からず戸惑う。

 琉球処分のような歴史的な事件は一つの立場や視点から捉えきれない。歴史の登場人物たちは私たちとまったく異なる価値観で生き、どのような結果になるか知らずに行動する。現在の価値観だけで評価したり、結果が分かっている現在から批判したりすることはいくらでもできるが、公平ではあるまい。

  今の私たちにできることは、琉球処分に学ぶことだろう。幸か不幸か、「繰り返される琉球処分①」(2月25日アップ)で触れたように、同じ構図を持った歴史的な事件は繰り返される。米中をはじめ近隣諸国は、それぞれの生き残りを懸けて、剥き出しの「国益」を振り回す。国際的な緊張が高まり、沸点が近い予感が満ちている。140年前のように、ただ嵐が過ぎ去るのを待っているだけでは嵐に飲み込まれるだけかもしれない。(T)

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