生活の中から生まれた多彩な島うた

 文字の記録を持たない庶民にとって、日々の暮らしの中で浮かび上がる感情や思いを表現する数少ない手段が歌だった。仲宗根幸市編著『琉球列島 島うた紀行』(全3集)を手にとると、琉球列島では地域ごとにいかに多くの歌が誕生したかが分かる。例えば、沖縄本島北部だけでも48の島うたが掲載されている。現代の我々からすれば、名もなき庶民たちがこれだけの島うたをつくり歌い継いできたことは驚きである。

 さまざまな想像が頭に浮かぶ。小さな島々ゆえに自然の恵みと脅威を間近で感じ、日本、中国、東南アジアなど周辺地域から政治や文化の多様な影響を受け、地域ごとに歌をつくり口ずさむ。労働と生活のリズムを組み立て、共同体の絆を強める。編著者の仲宗根氏は第1集のまえがきで「かつて、わが先人たちの生活のすべてが歌の場であった。ところが生産の場でうたわれていた島うたは、いつのまにか座敷歌へと変わってしまった。そのことは、現代社会が喜怒哀楽の身体的表現より、言語表現の方を重視する時代になったこと。労働も手足を使っての集団共同作業から機械を使っての個人作業に変わり、歌の場が大変貌したからである」と記している。(T)

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