『新しい琉球史像 安良城盛昭先生追悼論集』 高良倉吉・豊見山和行・真栄平房明編

 本書に寄せられた論文のテーマは多岐に及ぶ。「大型グスク出現前夜=石鍋流通期の琉球列島」「豊臣政権の朝鮮出兵と琉明関係」「日本国王と琉球国司」「煙草をめぐる琉球社会史」「組踊と中国演劇」など、琉球史の多面性を物語っているようだ。どのテーマに関心を持つかは人によって異なるだろうが、私個人としては高良倉吉氏の論文「近世琉球における都市の論理」が気にかかる。

 それによれば、1609年の薩摩侵攻以前、首都の首里でさえ人口6000人ほどであり、琉球には都市と呼べるような人口集積を持たなかった。私たちがイメージする国家とはだいぶ違っていたようだ。薩摩侵攻から100年ほど経過して首里が約2万900人、那覇が7900人に成長し、人口全体の約2割が都市に住むようになったとみられる(数字はすべて推計値)。

 都市の発生は、新たな職業・産業、文化や生活スタイルを生んだはずだが、論文の中で高良氏はこうした分野での研究がまだ十分でないと指摘する。専門家の間でどのような成果が発表されているか分からないが、都市の発展と生活・文化の変化は現代にも通じるテーマであり、もしも何らかの成果があるのならば、我々素人にも分かるように嚙み砕いて説明してもらいたいところである。(T)

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