時代の激流に揺れる琉球を俯瞰 高良倉吉・田名真之編『図説 琉球王国』

 琉球王国の歴史に関する本は多く目にするが、本書のようにコンパクトにまとまって、写真や図がふんだんに使われているものは意外と少ないかもしれない。時代の波に大きく揺さぶられる琉球王国を俯瞰する気分になれる。まだ、東アジアの各地に国家が誕生しても、国家間の交流は緩やかだった時代、琉球も独自のペースと形で文化の華を開かせた。しかし、時代が進むにつれてアジアの国々も発展のペースを速め競い争い、やがて欧米も繁栄の果実を得ようと迫りくる。琉球王国も大海に浮かぶ木の葉のように翻弄され、やがて飲み込まれてしまう。琉球が変化を迫られる要因は内部にも生まれる。その一つが人口問題。17世紀の初めには10万人だったが、王国末期に30万人と3倍に膨らむ。従来通りの国家の仕組みでは対応できないペースだったろう。(T)

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