アジアの中の日本と春節

 2週間後(1月22日)から中国が春節に入ることを伝えるニュースを時々耳にする。コロナ禍前ならば、買い物客が大挙して日本を訪れることを意味したが、今年はコロナの感染が中国国内で急速に広まっているため、それが日本にも飛び火することを懸念している。個人的には、春節といえば思い出すのがオーストラリアに住んでいた時、目にした中国系住民によるお祭りだ(写真はその時撮影)。

 オーストラリア最大都市のシドニーの中心部には、大きなチャイナタウンがあり中国民族の結束と文化を示しているという印象だった。自分が滞在した1年間、シドニーでも特に中国人が多い地区に住み、中国出身の青年とルームシェアをしていたが、彼らの合理主義的な考えや行動には感服したものだ。自分たちが生活したり資金を稼いだりするために、生まれた国かどうかはこだわらない。よりよい場所としてオーストラリアに移住する。

 現地社会に適応するために、英語名を名乗る(ルームシェアする青年はブライアンと名乗り、本名は知らなかった)。国の通貨は信用せず、世界どこでも資産として通用する金など貴金属で一定の資産を持つ。だから、チャイナタウンには必ず貴金属店があるといわれる。一方、春節のお祭りのように自国の文化を守り、家族の結束は保つ。ルームシェアの青年が父親の写真を示して「みんなに尊敬されている」と自慢していたことは印象深かった。日本では出会ったことのない発言だったから。その後、中国でも近代化が進み旧来の伝統から離れる傾向はあるのだろうが、春節がいまだに大きな行事になっていることから推測すれば、少なくとも日本よりは旧来の伝統が残っているのだろう。

 ちなみに、春節とは旧暦の正月であり、かつては日本でも祝っていた。というか、韓国やベトナムなど今でも祝う国はアジアでは少なくない。日本は明治維新とともに、あっさり旧暦行事の大半を捨てて新暦に移った。その新暦のもとでも、コロナ禍の影響もあり年中行事や祭りごとから遠ざかり、メリハリのない1年になりつつある。(T)

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