「地方は素朴」という幻想に潜む罠 岡本太郎著『日本再発見 芸術風土記』①

 本書では、芸術家・岡本太郎が自分で定めたテーマを抱えて日本の地方を訪れ、体ごとテーマにぶつかり答え探しに挑む。最初の訪問地・秋田では、「地方は素朴」という固定観念に厳しい批判を加える。太郎によれば、「地方は素朴」という都市部の好みに沿うように地元の習俗が一部つくりかえられるため、貧乏くさく貧相なものに堕してしまう。もともとの習俗は明るく生命力にあふれていると指摘する。また、かつては海外文化の窓口だった長崎では、物質文明に偏重して西洋文明と対峙した近現代の日本が生んだ弊害をえぐり出そうとする。(T)

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