救いのない若者たちの未来? 桐野夏生著『メタボラ』④
以前読んだ同じ著者の『OUT』はストーリー展開が破滅的なものの、どこか希望を感じる結末だったが、本書は希望のかけらも見当たらない。主人公の香月雄太は生真面目な振る舞いをしながらも、時として自ら破滅に向かうほど狂気的な行動をとり両極端の間を行き来する。副主人公の伊良部昭光も徹底的に欲望と感情に身を任せる。沖縄をめぐって関係者として登場する若者たちも、2人ほど極端ではないにしろ出口のない未来に向かってゆっくりと滑り落ちていく。
著者が描く救いのない若者の世界に納得しつつも、両極端の間を行き来する雄太と昭光には時折違和感を覚える。それは今の若者が私の世代では理解しにくいほど追い込まれているのか、それとも著者独特の若者の描き方からくるのか分からない。いずれにせよ、沖縄はユートピア的な外観とは裏腹に、経済や米軍基地、歴史などで深い闇を抱えるだけに、若者の貧困と絶望をより一層浮き彫りにするのだろう。