悲劇の連鎖を沖縄でどう受け止めるか 大城立裕著『カクテルパーティー』

集英社クリエイティブ編『戦争と文学8 オキナワ 終わらぬ戦争』から④

 久しぶりの本作品を読んだ。かなり前に読んだ時は、主人公の娘が米兵に強姦される部分は覚えていたが、それ以外の部分は記憶になかった。年月の流れとともに抜け落ちたかもしれないが、最初の読み方が浅かったせいも大きいだろう。

 今回改めて読むと、作者が沖縄をとりまく状況について深い重い思索を巡らせたことに気づく。米軍対沖縄や本土対沖縄という単純な対立構図に収めない。娘を強姦した米兵が罰せらないどころか、障害容疑で米兵が娘を訴えられる占領下の法体系そのものも理不尽さに胸が痛くなるが、主人公の苦悩はそれだけにとどまらない。

 日本軍によって深い傷を負った中国という視点が持ち込まれ、沖縄は一方的な被害者ではなく、より広く深い立場から捉えなおされ苦悩はさらに膨らむ。たとえ江戸時代までは独立国家であり、戦後は本土から切り離されたからといって、沖縄は戦前・戦中の日本軍が起こした蛮行とは無関係ではいられない。それは単なる知識ではなく、著者が中国・上海に滞在した経験からも来るのだろう。

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