老いた娼婦と若い米兵の関係をどう読む 吉田スエ子著『嘉間良心中』
集英社クリエイティブ編『戦争と文学8 オキナワ 終わらぬ戦争』から⑥

本作品は、老いた娼婦が若い米兵に溺れる姿を描くが、時代背景を考えず現代の感覚でそのまま読めば「おばちゃんが年甲斐もなく」とか思ってしまうだろう。しかし、具体的な年代は示されず、なぜ主人公の女性が娼婦になったか語られていないものの、舞台は米軍統治下の沖縄であることがはっきりしている。
戦後しばらくは、多くの土地を米軍に接収され、戦争で焦土と化した沖縄に産業らしい産業は育たなかった。米軍は沖縄住民を基地労働者として安価に雇えるように、積極的に産業を起こさなかったという指摘もある。いずれにせよ、男性でもまともな仕事にありつけず、女性ともなればなかなか働き口を見つけるのに苦労した。
家族の中で病人を抱えるなど借金を抱えたため、仕方なくまとまった収入が得られる売春の道を選ぶ女性が少なくなかった。前借金のない売春婦は全体の1~2%だったという1965年の琉球政府調査がある(詳しくは沖縄探見社編『沖縄の基地と性暴力』で当時の売春事情について説明している)。こうした時代背景を抜きにして本作品を読むことはできないだろう。