新型コロナで旧暦行事が中止に

 2月11日は旧暦の大晦日であり、これから旧正月を祝う行事が沖縄各地で繰り広げられるはずだったが、今年は新型コロナの感染拡大のせいで軒並み中止のようだ。那覇市では目立った行事はないが、離島や本島の地方では現在でも旧正月を盛大に祝うところがある。

 旧暦の大晦日といえば、5年前、粟国島で参加した「マースヤー」の行事が印象に残る。マースヤーは、旧暦の大晦日から元旦にかけて、島に11ある小字ごとに、歌や三線、踊りのグループをつくって地元の各家庭をまわり、家内安全や五穀豊穣を祈って歌や踊りを披露する行事である。旧盆に青年団が地元の家々を回ってエイサーを踊るのに似ているかもしれない。

 各家の庭先で披露する歌や踊りは、「かぎやで風」「祝節」「めでたい節」「唐船ドーイ」「上り口説」など一般的な沖縄民謡が中心だが、選曲は小字ごとによって異なり、櫂を使った踊りや棒術を披露する小字もあった。衣装も小字ごとによって特色があり、普段着に揃いのはっぴをはおっただけのところもあれば、本格的な琉球風の着物をつけるところもあった。

 「マース」とは沖縄方言で塩であり、「マースヤー」とは塩売りを意味する。冷蔵施設がない時代、たくさんの料理をつくる正月には、日持ちをよくする塩が大量に必要になり、年末には塩売りが盛んになったが、これに地元の芸能が組み合わさって行事「マースヤー」が形づくられたといわれる。

 小字によっては現在でも、歌や踊りを披露する前後に塩のやりとりがある。歌や踊りのグループが各家に配る場合もあれば、各家がグループに渡す場合もあり、歌や踊りの最後に各家に渡す場合もある。また、まったく塩のやりとりもない小字もあり、この点についても小字ごとに違うところが興味深い。(T)

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