抹殺される戦争の記憶

 あと1週間余りで74回目の終戦記念日を迎える。戦争の記憶の風化が叫ばれてきたが、ここ数年は、風化というよりは意識的な削除を感じずにはいられない。戦争被害者としての日本は語られても、加害者としての日本は歴史から消し去ろうとする流れである。

 つい最近では、愛知県で開催された芸術祭で、元従軍慰安婦像の展示について暴力的な脅迫や政治的な圧力があったされる事件があげられよう。沖縄では2012年、首里城に近い旧日本軍司令部の入り口に説明版が設けられたが、政治的な判断で慰安婦に関する記述が説明から削除された。

 沖縄戦関連の書物を開くと、軍による慰安所の設営や慰安婦の駆り出し、日本兵の住民への虐待や虐殺についての記述が現れることは珍しくない。しかし、県外でこれらについて語られたり伝えらたりすることはほとんどない。戦争の記憶が風化されたというよりは、そもそも正しく伝えられていない。日本には、自分たちの過ちを認めることに潔くない傾向があるのかもしれないが、近年は中国や韓国との緊張関係が高まるにつれて、その傾向がいっそう濃くなっている。

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