感染症と敵のイメージ
敵を仕立てる。特に政府や政治家を中心に、そうした作業が近年増えている気がする。士気をあげやすく団結しやすいからだろう。「新型コロナに負けない」。テレビで繰り返し唱えられるフレーズである。外国でも同じ考え方を使う。新型コロナの抑え込みを戦争に例える首脳も少なくない。
もちろん、科学を持ち出すまでもなく、新型コロナは意志を持った生き物ではない。ましてや、ヒーロー物に登場しそうな、「人類を滅ぼしてやる」と息巻く悪の帝国でもない。ただ、「敵」のイメージをつくることによって闘争心をかきたて不自由に耐えてもらいたいという意味合いがこもっているのだろう。新型コロナならば、いくら悪役に仕立てても被害者はいない。
しかし、この「敵」仕立ては2000年代に入ってから多用が目立つようになった。中国や韓国といった国から始まり、特定のメディア、さらには特定の個人も対象になっている。テレビや新聞、雑誌、書籍など既存のメディアが視聴率や発行部数が右肩下がりの地盤沈下を続け、特定の国やメディア、個人を集中的に攻撃すると視聴率や部数を稼げることが分かったせいだろう。匿名で発信できるネットが普及し、鬱憤を晴らす生贄を求めるようになったのかもしれない。