終戦記念日とは何か
戦争の記憶を風化させてならない。よく口にされるが、佐藤卓己/孫安石編『東アジアの終戦記念日 ―敗北と勝利のあいだ』に目を通すと、戦争の記憶は終戦から10年経たないうちに変質していることがわかる。印象操作の跡がうかがわれる。
終戦記念日といえば8月15日が完全に定着している。しかし、世界史的には、終戦の日とはみられていない。ポツダム宣言受諾が正式に連合国へ伝達されたのは8月14日、大本営が停戦命令を出したのは8月16日であり、東京湾上の戦艦ミズーリ号上で降伏文書に調印されたのが9月2日。8月15日は、国内向けの「玉音放送」があったにすぎない。しかも、正式に政府が8月15日を終戦記念日と定めたのは、戦後18年も経過した1963年だった。
沖縄では現在、終戦の日としては6月23日「慰霊の日」が定着しているが、これも社会情勢などの影響もあり紆余曲折を経ている。ちなみに6月23日は、沖縄守備軍の司令官・牛島満が自決した日であるが、その後も戦闘は続き、沖縄の日本軍が正式に降伏文書に調印したのは9月7日だったという。
そもそも、日本の「建国記念の日」は、初代天皇の神武天皇が即位した日とされ、まったく神話の世界。日本の記念日は本当に記念日と呼んでよいか疑ってかかる必要があろう。(T)