川瀬光義著『基地と財政』

 米軍基地をめぐっては、政府によるアメとムチの使い分けはたびたび指摘されてきた。米軍基地を協力的に受け入れる自治体に対してはふんだんに支援をする一方、反対する自治体に対しては支援の蛇口を締める。まさに、札束で相手の顔を叩き、米軍基地を受け入れさせるようなものである。サブタイトル「沖縄に基地を押しつける『醜い』財政政策」とあるように、こうした政策は特に沖縄に対して目立つ。本書は政府や自治体のデータを駆使して、アメとムチの使い分けぶりを浮かびあがらせている。

 本来、国内の自治体に対して客観的な評価基準をもとに公平・公正に運営されるべき財政政策が、政府の恣意的な判断によって決定できるのか。本書は、沖縄振興予算の増減に大きな影響を及ぼしている一括交付金について次のように指摘する。「一括交付金の予算額は、通常の予算編成過程のように必要額を積み上げて決まるのでなく、政府の基地政策に対する沖縄県の姿勢によって左右されてきたのが実情です。それは、決して望ましいことではありませんが、ソフト交付金の交付要綱をみますと(中略)交付額の決定は首相の権限であると規定されています。沖縄振興予算と同じく、予算額決定の明確なルールはなく、首相の裁量で決まることになっていることが、こうした恣意的な運営を招く余地を政府に与えているといえます」。(T)

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