琉球は敗者たちの駆け込み場か 谷川健一著『甦る海上の道・日本と琉球』
琉球の歴史をひも解くと、源平の争いで敗れた源為朝や平氏、室町時代の南朝残党にあたる相良氏・名和氏が、逃げて来たとする伝説が残る。現在でも本土から琉球の島々に渡ることは簡単ではない。ましてや、平安末期から室町の時代にたどり着くには相当な危険を伴い、歴史上の人物たちが敢えて辺境の地まで逃げ延びようとは思うまい。根も葉もない「伝説」にすぎないと見なしがちである。
しかし、本土と琉球の間には古くから人やモノの交流が存在したことは揺るぎない事実であり、伝説をそのまま信じないにしても、安易に一笑に付すことはできない。少なくとも、関係する人々が琉球に足を踏み入れたことを推測させる証拠はある。中でも、相良氏・名和氏の残党が海賊化し九州から沖縄本島に渡り、琉球王国の建国に深くかかわったとする説に筆者は共感を覚えている点は興味深い。