多様な歴史・社会・文化を分かりやすくコンパクトに 松島泰勝編『歩く・知る・対話する琉球学』
本書は琉球王国史・沖縄近現代史、米軍基地、エコツーリズム、食文化・芸能、地域メディアなど100を超えるテーマについて、分かりやすくコンパクトにしかも多面的に紹介している。沖縄について幅広く深く知るための入門書であると同時に、沖縄という視点を通して日本について深く考えるための入門書ともいえよう。本編は「琉球人の祖先は、日本人の祖先と同じでしょうか。『人種』と『民族』はどうちがいますか」という根源的な問いから始まる。沖縄戦は戦前、海外で日本が侵略戦争を繰り返した帰結であり、米軍基地の沖縄集中も、本土における基地負担の軽減とは無関係ではないなど、読み進めるうちに、「沖縄問題」の多くは国家としての日本のあり方と深くかかわってきたことを痛感するはずだ。(T)