国家の虚飾に挑んだ日々 大野光明著『沖縄闘争の時代 1960/70』
沖縄返還が実行される前夜、沖縄の内外を問わず、さまざまな場面で「闘争」が繰り広げられたことを本書は語る。米軍基地の固定化にとどまることなく、ベトナム戦争へのかかわり、本土における差別と格差、沖縄の歴史と文化との対峙、さらには日本という国のあり方にまで向き合わざるを得ない時代だったといえよう。この時代から現在を照らし出そうとすれば、半世紀余りのうちにこの国はどうしてこう変わってしまったか大きな問いかけが起きる。
昨年2022年は沖縄の本土復帰50周年にあたる節目の年。沖縄をめぐる米軍基地の状況は半世紀の間も変わらない上、ロシアのウクライナ侵攻という衝撃もあり、中国や北朝鮮など周辺諸国との緊張が高まる一方、少子高齢化に伴う社会機能の衰退やエネルギー不足・価格高騰など国のあり方や将来を議論する好機であったはずだった。もしかしたら、我々はこうした問題に対して本気で切迫感を抱いていないのかもしれない。不安を訴える感情的な声は挙がっても、問題点を冷静に掘り下げる雰囲気はない。本土復帰についても半世紀の日本と沖縄の関係を回顧するだけにとどまったように思える。(T)