本土と沖縄で溝は深さを増す? 藤原書店編集部編『「沖縄問題」とは何か』
普天間基地の県外移設を公約に民主党政権が誕生して間もない2010年に発行された季刊『環』の特集「『沖縄問題』とは何か」を、単行本化したのが本書である。あの頃は全国的に沖縄の米軍基地への関心が高まり、本書に寄せられた文書にも沖縄の問題を日本全体の問題として捉えようとする気迫が込められている。しかし、その後はご存じのとおり、民主党政権は短期間のうちに終焉を迎える。中国、北朝鮮、ロシアなど近隣諸国からの軍事的な脅威を叫ぶ声が高まり、社会の空気は「勇ましさ」や「日米同盟」という言葉に酔う方向へ流れる。理解は進むどころか、沖縄からの声はかき消され、「勇ましさ」や「日米同盟」に水をさしかねないと敵意すら向けられるようになった。(T)