視点の多様性に向き合う根気強さ 仲里効・高良倉吉著『対論 「沖縄問題」とは何か』

 本書は、対極的な思想を持つ沖縄の論客、仲里効氏と高良倉吉氏が30のテーマについてそれぞれ綴った文章に加え、2人の直接対談を掲載している。高良氏は、日本という国家の枠組みの中で沖縄を現実的にどう変えるべきか問うのに対して、仲里氏は国家の枠組みを取り払い、沖縄独自の文化と歴史に基づいた地域のあり方を探るべきと訴える。おそらく、沖縄において今後は高良氏に近い見方が比重を増し、仲里氏に近い見方は減るだろうが、地域の豊かさを守り育てるためには仲里氏の視点も欠かせないだろう。

 沖縄という一つの地方についてこれだけ多様で幅広い見方ができることも表す一方、2人の対論は、沖縄問題をめぐる溝の深さを象徴しているかもしれない。ネット時代になり、溝は埋まるどころ深さを増しているようにも思える。議論は違いを際立たせるだけか、どちらの持論が正しいかを競うだけになりがち。相手をねじ伏せることに心地よさを覚えるばかりで、尊重したり理解に努めたりする姿勢はあまり見られない。社会の分断が叫ばれる時代、多様性を認めた後、どうやって違いを乗り越え、協力できる部分を見い出せるかも重要なテーマになろう。(T)

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