三つの異界をどう評価? 高山羽根子著『首里の馬』
本書は、沖縄で暮らす主人公・未名子が「郷土資料館」「クイズ」「宮古馬」という三つの世界にかかわる物語である。それぞれが、奇妙な世界であり、幻想と現実の境界線にきわどく横たわる。著者はそれぞれの世界の細部を描き、その質感や肌触りが伝え、「孤独」という現代的なテーマを底流に感じる。ただ、なぜ、この三つの世界が舞台となったのか最後まで疑問は残った。年に数冊程度の小説しか読まない私には断言できないが、新しいスタイルの小説という考えも浮かんだ。第163回芥川賞を受賞し、本書の解説で紹介されているように、選者から「奇抜なユーモアに満ちた思考実験」「文学にしか出来ない冒険」「作者はもともと『魔法』を使える小説家」などの評価を受けている。(T)