ユーミン、尾崎豊、大滝詠一にも投影 難波功士編『米軍基地文化』
本書では各方面から米軍基地が日本文化・社会に及ぼした影響を分析するが、70年代から80年代にかけて歌謡曲やニューミュージックの洗礼を受けた者としては「第2章 米軍キャンプ・アメリカ・歌謡曲 ――戦後ポピュラー音楽のひとつの系譜」に注目したくなる。
ユーミンや尾崎豊の楽曲にはさりげなく基地の風景が歌い込まれ、岩手出身の大滝は横田基地近くに住んだ経験があり、彼のヒットアルバム「A LONG VACATION」と米国文化のかかわりは誰も見ても明らかだ。ただ、彼らの音楽全体どれほど影響したか分からないが、異質な磁力を発する身近な外国として気になる存在ではあったかもしれない。
いずれにせよ、戦後、米軍基地は縮小傾向が続いたこともあり、存在感は下がり、日本の音楽への影響もずっと小さくなったことは確かだろう。むしろ、現在の問題は、「強くてカッコイイ」米国像から今もって日本人の多くが離れられないことだろう。政治家から国民の多くに至るまで、米国の後についていけば外交・安全保障は安心という思考停止状態から抜け出せない。しかし、現実には国際社会において米国の地位はすでに圧倒的ではなく、「世界の警察」としての役割も自ら放棄を宣言している。中国、ロシア、インドはもちろんのこと、軍事同盟国のはずの西欧諸国も米国と距離を置くこともある。日本も古い米国像を書き替える時期にきている。(T)