アイヌと琉球人の共通点は  加藤博文・若園雄志郎編『いま学ぶアイヌ民族の歴史』

 小学校から中学校にかけて習った日本史では、最初、日本全土には縄文人が入り込み、その後、近畿地方など中央部へ弥生人が大陸から渡り弥生文化が広まったと思う。この中ではアイヌや琉球人の成り立ちに触れる記述はなかった。しかし、縄文時代以降の日本はそれほど単純な図式では描けない歴史をたどったようである。しかも、大陸からの渡来人はそれほど多くなく、在地の縄文人の子孫が弥生文化を吸収したらしい。

 本書では、アイヌが記述の中心になるが、近代以前は多様な文化を持つ集団が北海道や東北へ出入りしていたことが浮き彫りになる。これは、現在のように国境という概念はないのはもちろん、近畿地方のように特定の勢力が組織的に統治していなかったこととが影響するのだろう。

 意外なのは、アイヌの人々が交易で大きな役割を果たしていたことだ。琉球の人々が日本列島の中で対極的な位置にありながら、アジア各地との活発な交易をしていた点と共通する。琉球も北海道も近世までは中央権力の統制が及びにくい一方、日本の外の地域との窓口になりやすい地理的な位置にあったことを考えれば、自由な交易が発展する条件はそろっていた。アイヌと琉球人が遺伝学的に近い関係にあることも興味深い。(T)

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