贈与は資本主義社会を救えるか? 近内悠太著『世界は贈与でできている』④
本書を読んでいて一番どきりとしたのが、資本主義の思想と「自由」の相性がいいと指摘したところだ。なぜならば、自分が若き日に最も価値を見出したのは「自由」だったからだ。確かに地縁や血縁からかけ離れ、自分の努力と才能で生きたいと願った。まさに資本主義的な思想の中心を突き進んだ。それをズバリ指摘された気分だった。
では、本書で語る「贈与」は「自由」を阻害するかいえば、そうではないようだ。贈与は無償の愛であり見返りを期待しない一方、贈与を受ける側を束縛し負担を感じさせるのならば、それは「贈与」でないと断言する。自由とは対立しないが、本書のサブタイトルが「資本主義の『すきま』を埋める倫理学」とあるように、「自由」だけを振りかざしては生きられないと読むべきだろう。
贈与を定義することは難しいが、確実にこの世の中に存在し必要とされることは間違いない。その中で最も重要なのが温暖化対策だろう。自分たちの世代が豊かな生活を送ることに専念しエネルギーや物質の大量消費を続ければ、効果的な温暖化対策を打つことは難しい。たとえ自分たちの世代にとって不便や不利と分かっていても、安心して過ごせる地球環境を次の世代に「贈与」する覚悟をしなければならない。