沖縄で低い視線から奇想天外の展開か 桐野夏生著『メタボラ』①

 過去に読んだ著者の作品で一番印象に残るのは『OUT』である。ごく普通の女性たちが遺体処理のビジネスにのめり込むという展開である。輪郭だけなぞれば唐突とも思える物語も、普通の人々が持つ悪意や怨念、残忍さを巧みに綿密に描くことによってリアルさが増す。

 本書は沖縄を舞台にしているとあって手に取り読み始めたが、最初から波乱含みである。主人公が過去に関する記憶の一切を失ったまま沖縄本島北部を逃げ回るところから始まる。親元を飛び出した宮古島出身の若者や、コンビニバイトなどで食いつなぐ東京出身の女性らと出会い、互いの打算や弱さ、悪意が絡まり物語が進んでいく。この社会が持つ若者の貧困という問題を伴いながら、著者らしい奇想天外の展開を予感させる。

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