保守回帰の日本へ警鐘 吉本隆明講演集1『日本的なものとはなにか』①
7月投開票の参院選では保守・新興勢力の躍進が注目されたが、気になったのは彼らが主張する「日本的なるもの」。どこまで事実に基づくのか、検証可能なものか疑問符がつく。そういう意味では、現代では論壇で名前があがることがすくなくなった吉本隆明の考察は示唆するものが多い。

本書の「南方的要素」では、古くから日本社会には南方的要素が随所にみられるとしている。日本の神話では、国家の原始形態である氏族社会において根幹である神を祀る役割を女性の天照大神が担い、男性である弟の須佐之男命が現実の政治を司り、しかも神を祀る役割は女性から女性へと相続され母系社会であったことが推察され、南方的な要素がみられる。琉球王国時代では、女性が聞得大君をはじめ神に仕える巫女の役割を果たし、男性が政治を担う体制が続けられ南方的要素が現実社会で機能した。現在でも天皇家の結婚は婿入り婚の形式を踏み母系制原理の存在が見受けられるという。