古来の信仰との関係で見る仏教とキリスト教 高取正男著『宗教民俗学』④

 8月8日投稿の記事で吉本隆明氏がアジア的国家とヨーロッパ的国家の成り立ちの違いについて語ったことに触れたが、本書(『宗教民俗学』)の「奈良仏教の展開」で仏教とキリスト教の違いについても同じ構図があてはまる点を著者が指摘しており興味深い。今日本はお盆シーズンに突入したが、日本のお盆は純粋に仏教行事というよりは、日本古来の祖霊信仰が取り入れられたことは広く知られている。

 日本に限らず、道教やバラモン教などアジア各地で地域古来の信仰と融合しながら仏教は広まったという。一方、キリスト教は地域の古き神々を粉砕しながら「唯一神と三位一体の信仰」をヨーロッパ全土に広めた。激しい闘争を通じて他者を圧倒する中で自らの信仰と思想の純粋性を高めうるという視点もあるらしいが、日本人にはなじまないようにも思える。少なくとも近代以前においては国家と宗教の成り立ちは同じ過程をたどったとみるべきかもしれない。

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