日本文化礼賛の時代に岡本太郎を読む

 大阪万博が開催されているせいか、前回(1970年)の大阪万博でシンボル的な存在「太陽の塔」を制作した岡本太郎の名前をよく耳にするが、彼の著作を手に入れようとすると、結構手こずるかもしれない。最近よく巷で流れる「すごいぞ日本」的な文化紹介ではなく、心の深い部分にどこまで触れるかによって文化の価値を見定めようとする彼の文化論に共感する部分は大きい。日本文化をやたら礼賛する最近のテレビ番組などを見ると、これでもかこれでもかと甘ったるいお菓子を食べさせられている気分になり、太郎の辛口な日本文化論が恋しくなる。

 本土復帰前に訪れた体験をもとに書かれた『沖縄文化論 忘れられた日本』は今でも沖縄の書店で買え手元にある。「東北文化論」などを収めた『神秘日本』(角川ソフィア文庫)をはじめ何冊も書店の店頭で見た記憶がある。簡単に購入できると思っていたが、いざその気になって書店で尋ねると、店頭はもちろんのこと出版社にもないという答えが返ってきた。確かにここ数年、書店の売り場面積がだいぶ縮小され、残った売り場も実用書の割合が増えた気がする。『神秘日本』などを収録した別の書籍(ちくま学芸文庫『岡本太郎の宇宙4 日本の最深部へ』)についても問い合わせると同じ結果となった。仕方ないので、ネットの古書店で検索すると、ちくま学芸文庫は在庫があるとのこと。注文してようやく最近手に入れることができた。

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