東北の山岳信仰と沖縄の御嶽 「修験の夜――出羽三山」
『岡本太郎の宇宙4 日本の最深部へ』より②

日本人はどこに精神的エネルギーの源を持つのか。この答えを求めて東北の修験道の地を訪れる。ただ、山で実践される過酷な修行ではなく、特に目をひくもののない自然が醸し出す神聖な空気に太郎は深く心惹かれる。沖縄の御嶽を訪れた際、同質の感動を覚えた。御嶽は「神のおりる場所だが、しかしまったく変哲もない、森の中の小さな広場で、その真中に石ころが二つ三つ、落ち葉に埋もれてころがっているだけ。祭壇も、何もない。そこにかえって強烈な神秘があった」と回想する。
清々しく美しい国土に育まれた潔癖を求める純粋なロマンティシズムを土台に、超自然的な神との素朴なつながり方を受け継いできた日本人が、仏教を受け入れ修験道などの独自の信仰形態が生まれたのではないかと考察する。一方、日本的ロマンティシズムは無思想で非論理的であるため、仏教など高度な文化を前にするとコンプレックスを持ち、煩雑な形式や様式に陥り本来の精神的エネルギーの源を忘れがちになると危惧する。