太郎の求める感動とは 「曼荼羅頌」
『岡本太郎の宇宙4 日本の最深部へ』より⑥

近代芸術の権威主義や官能主義を「不潔」「いやらしい」と否定し、芸術のあり方にもがき悩むうちにたどり着いたのが曼荼羅だった。芸術として見られることを拒み寺院の奥深くで秘蔵される。宇宙の真理を写し取ったその姿に心ひかれる。ゆるぎない絶対があり、勝手な解釈を許さない。しかし、芸術のあり方に置き換えようとすると、そこには大いなる矛盾が立ち現れる。見られない芸術とはそもそも成り立つのか。見られなければ伝わらない。
見られることを拒む意志と、見られることを望む意志という矛盾する精神を越えたところに、人を絶対的なものへと導くものがあると太郎は説く。困難であり論理的に解きほぐすのが難しい展開である。だが、安易な妥協をせず世界は矛盾に満ちたことをそのまま受け入れる先にしか、人間を根本的に揺さぶる本質的なものが生まれないことを語っていよう。