沖縄の京太郎とは何者か 上原善広著『日本の路地を旅する』①

「路地」とは被差別部落を意味する。著者は書名のとおり全国各地の路地を旅するが、「終章」として沖縄を訪れる。もともと沖縄には路地と呼ばれる場所はない。琉球王国時代、本土から路地の者たちがわずかに移り住み「京太郎」と呼ばれた記録が残るだけだった。
旅の始まりは著者が大阪の路地出身だったからであり、各地に残る路地の歴史を残すことが目的だった。本来ならば立ち寄ることはもちろん、「旅」の「終章」に選ぶ場所ではなかったのだろう。ところが、「旅」の締めくくりに選んだのは著者の兄が八重山に住んでいた点が大きいだろう。
兄は少女への犯罪から刑務所送りとなるとともに借金を重ねて南の果ての島へ流れていった。現在「京太郎」といえばエイサーの道化役を思い浮かべる人が多いが、著者が沖縄の旅でかかわったのは旅芸人や念仏者であり戦前まで首里城近くの安仁屋村で暮らし「京太郎」と呼ばれる人々だった。調べれば調べるほど、彼らが本土から琉球へ流れて暮らした歴史には、兄の姿、さらには路地の宿命を負った著者自身の姿に重ねずにはいられなかった。

