近現代絵画の巨匠は下手くそか 岡本太郎著『今日の芸術』①

中世までの西洋画は細密に描かれその良さは分理解できるが、近現代になるとよく分からない絵画が多くなり、特に戦後の画家はチンプンカンプンな作品が目立つ。こう考える人は少なくないだろう。しかし、本書を読むうちに、なぜ絵画の作風が大きく変化したか腑に落ちる。
近世まで絵画は一部の王侯貴族のために熟練を重ねた職業画家が描くものだったのに対して、近代以降、庶民を含めたあらゆる人々のために誰もが筆をとることができるようになった。それゆえ、絵画の技術的な才能や熟練技よりも絵によって伝えられる精神性や革新性が重視されるようになる。
本文中に芸術は「うまく」あってはならない、「きれい」であってはならない、セザンヌは技術的には下手くそといった、一見奇をてらったように思える言葉も説得力を持つ。現代絵画に対して「こんな絵なら、おれにだって描ける」「子供にだって描ける」という感想は、近現代絵画が平易な技術の上に成り立っているという意味では正しいが、「ほんとうに自由で人間的な心情の豊かさ、すばらしさ」が溢れる点を見逃してはならないと著者は説く。

