外国コンプレックスから抜け出せるか 岡本太郎著『今日の芸術』③

本書の最後の方に「外国人がほめた」という項目がある。それによれば、明治時代になって来日した外国人有識者が、それまで気づかなかった伝統的な日本美を高く評価したことを喜び、以来、日本人は「外国人がほめた」にこだわり続けているという。
太郎は「外国人がほめた」を喜ぶ心理を日本人の外国コンプレックスと断じる。素晴らしいもの、よいものを「日本産」と「外国産」に区別する必要はないと説く。外から評価されることにこだわれば、外国人の評価という権威によりかかり、日本本来の文化を見失う危険をはらむ。さらに、伝統とはあくまでも過去の産物であり、現代の我々が日本文化をどう盛り立てるかについて思考が停止すると指摘する。
本書は最初の出版が1954年と、60年以上経過しているが、「外国人がほめた」にこだわる姿勢は現在も続く。テレビ番組などでは外国人が評価する日本の文化・製品・観光地をたびたび紹介・解説している。その頻度は近年高まり、世界的に経済力の地位が低下する自国を励ますようにみえる。政治家たちの口から飛び出す言葉も、この流れに沿って「日本の経済を強くする」「世界の真ん中で輝かせる」など経済大国2位だった頃の夢をもう一度という意識が滲み出る。
裏を返せば、経済力が低下し外国コンプレックスが一段と高まっているともいえよう。しかし、現在の世界において人口減少・高齢化が進む日本で経済大国復活が可能かどうか疑問は大きい。保守勢力は日本経済の復活を叫ぶものの現実的な道筋は示せていない。60年以上前に岡本太郎が綴った言葉をかみしめ、今の日本に何が必要か、何が幸せか冷静に考える必要があろう。
