人間関係の希薄化の向こうには何が 村田沙耶香著『消滅世界』

 著者の芥川賞受賞作『コンビニ人間』には衝撃を受けた思い出がある。コンビニを偏愛する主人公が世間とのズレを感じながらも、さらにコンビニ生活にのめり込んでいく。善悪の境界を乗り越える狂気性に強烈な新鮮味を覚えたものである。本書でも、世の中の常識と主人公の心の奥底から漏れる声のズレが大きなテーマになり、より一層常識の移ろいやすさをクローズアップする。ただし『コンビニ人間』が現代の常識の延長線上にある物語だったのに対して、本書は、セックスではなく人工授精で子供を産むことが定着し、夫婦間の性行為は「近親相姦」とタブー視された世界が舞台。恋愛も家族の関係も個人的な感情が抜き取られ効率化される社会の流れに主人公は違和感を覚えながら次第に飲み込まれていく。かなり極端な世界が描かれているように思えるものの、現代でもすでに人間関係が希薄化・無色透明化されていることは間違いあるまい。

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