県内を潤さない基地関連予算
基地のおかげで沖縄は大きな恩恵を受けている。全国的に知られている通説の一つだろう。だが、本当だろうか。一つひとつの具体的な事業を検証すると大いに疑問が残る。琉球新報社編『基地と沖縄経済 ひずみの構造』はこのように説く。具体的な例の一つとして、米軍発注の基地関連工事を挙げる。百億円を超す工事が発注されるが、工事代金に見合った多額の保証金を求められるため、大半の工事は県外の大手企業が受注し、規模の小さな県内企業は利潤の薄い下請けに回るしかない。
基地関連事業に限らず、大規模プロジェクトは政治家もマスコミも取り上げやすいものの、その規模の大きさゆえ、中小企業が大半を占める沖縄では恩恵を被りにくいことは以前から指摘されてきた。沖縄振興プロジェクトの恩恵は、ザルのように沖縄からは抜け落ちて本土へ還流され「ザル経済」と呼ばれる。9月6日付の地元紙によれば、2011年度から2019年度国が発注した公共事業のうち、45%は県外企業が受注しているという調査結果が明らかになっている。
全国メディアは大型プロジェクトが決定されるまでは、賛否両論の意見を取り上げ盛んに報道するが、いったん正式決定すると扱いが少なくなる。ましてや、プロジェクトが完成した後については、よほどのことがない限り焦点を当てることがない。繰り返し報道するうちに視聴者や読者の反応が薄くなり、もっと反応のよい目新しい話題に走のだろう。しかし、プロジェクトの成否を判断するのは、実際に完成し運営が始まってから。決定前の予測と後の結果を比べてこそ、判断が正しかったか妥当かを見定められる。同種の別のプロジェクトに踏み切るべきかどうか判断する際、重要な判断材料になろう。(T)