三木健著『民衆史を掘る 西表炭鉱紀行』

 西表炭鉱は日本の最も南にあった炭鉱であり、明治中期から終戦後まもない時期までの60年余り続いた。本書は、かかわった人々を訪ね歩き、同炭鉱で何が起こっていたか浮かび上がらせる試みである。

 それによれば、もともと高温多湿の炭鉱という劣悪な労働環境のもと、マラリアや食料不足に苦しめられた上、ジャングルの中という隔絶された場所にあったことを利用し、監視役の暴力による脅しによって強制労働が繰り返された。しかも給与は現金でまともに支払われず、労働者は炭鉱切符とよばれる炭鉱内でしか使えない金券を受け取り、食料などの必要物資を購入しなければならなかった。経済的な搾取とともに、逃亡防止につながったといわれる。戦後、石油に取って代わられるまで明治の近代化以降、わが国のエネルギー供給を支えた石炭がいかに生産されたか改めて振り返るべきだろう。(T)

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