ありのままの自然に神を見る心 湧上元雄・大城秀子著『沖縄の聖地』
最初に琉球の創世神話に触れながら、琉球王国にとって重要だった聖地・御嶽を、写真や図をふんだんにつかいながら、分かりやすくコンパクトに解説している。興味深いのは、王国時代に「東御廻り」や「今帰仁上り」のように、一定期間ごとに聖地を順番にめぐって拝む「巡拝」が、国王から平民まで一般化していたことだ。
聖地はいずれも、壮麗な建物や偶像は一切なく、簡素な祠や香炉があるだけ。王国時代の人々はどのような想像力を働かせ、ありのままの自然に神を見出していたのだろうか。そう考えたくなる。一方で、四国八十八カ所巡り、スペインのサンディエゴ・デ・コンポステーラを目指す巡礼など、洋の東西を問わず聖地をめぐる旅は人の心をとらえてきた。日々の雑事に追われていると、人生は細切れの集まりになり、自分の生きる意味や目指すべき生き方など「全体性」は失われがち。自然の中を歩きながらひたすら自分と向き合う時間を求め、聖なるものと一体化したいと願う気持ちは変わらないのだろう。(T)
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