想像力に翼を与える異界との出合い 石川きよ子著『沖縄昔ばなしの世界』

 昔話は現実にはありえないことばかりだが、科学技術が目まぐるしく進歩する時代でも、子供たちの心を捉え、大人たちも懐かしい気分にする。いや、ありえない話だからこそ求めるのかもしれない。時には体を動かし汗をかきたくなるように、心も科学や合理性から解き放たれ、自由に想像を駆け巡らせたくなっても不思議はない。理解しがたい異質な世界を感じることによって、何でも思ったとおりにはいかないと謙虚になり、前を向いて進めるのかもしれない。

 日照り、飢饉や豪雨など自然災害に加え、首里王府や薩摩藩から二重、三重の搾取を受けた歴史が、現実を離れられる昔話を沖縄で生んだかもしれない。各地で庶民の思いを物語に紡ぎ伝えられたのだろうが、その多さには目を見張る。そうした昔話のうち、本書は24編を掲載する。話の展開は日本で一般的な昔話に似たものから、沖縄ならではと思われるものまでさまざま。人魚が津波の襲来を知らせる話は沖縄独自ではないだろうか。(T)

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