切り刻まれた生を繋ぎ合わせる  ジョーゼフ・キャンベル&ビル・モイヤーズ『神話の力』①

 目まぐるしい速さで情報が更新され複雑化する社会の中では、個人の役割はより細分化され、より多くのスペシャリストを育てる方向へ進む。分業は産業社会が始まったときからの宿命だ。おかげで作業は効率化され、知識や技術は細いドリルでねじ込むように掘り下げられ、庶民も科学と合理主義の恩恵に浴することとなった。しかし、人間の体やモノの動きを微細に観察・研究し、化学反応式や方程式に置き換えても、生きる意味は見えてこない。むしろ物質として詳細に分析すればするほど生の本質から遠ざかる気がしてならない。科学の力によって分析しやすいように分割された「生」を繋ぎ合わせ、本来の「生」を味わえるようにすることに神話の力がある。本書は最初にそう語りかける。(T)

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