米軍への忖度か? 消極的な国の対応
沖縄の米軍基地周辺の河川や浄水場の飲料水などから検出された有機フッ素化合物PFASは、消火剤などに使われてきたが、発がん性が疑われ体内に長く留まるといわれる有害物質。市民団体が京都大の協力を得て、基地周辺に住む本島中北部の住民400人についてPFASの血中濃度を調査することが明らかになった。健康への影響を心配する住民の声に対し、国や県など行政が応えず住民団体や研究者がしびれを切らした格好だ。
5月30日の参院予算委員会で、PFAS問題について岸田首相は「政府として何ができるか検討したい」と答弁しているが、具体的な施策は示していない。これまでに米軍普天間飛行場などの汚水調査で、国の暫定指針値をはるかに超えるPFASが検出されているにもかかわらず、国などが積極的に対策に動く気配が見えない。沖縄の返還から半世紀が経っているにもかかわらず、国民の健康を守るよりも米軍への忖度が働いていると見なされても仕方ないだろう(実質的な圧力があるのかもしれないが)。
PFASは約5000種類存在するといわれるが、そのうち主な有害物質であり今回市民団体の調査対象になるPFOSは2009年、国連のストックホルム条約会議で製造などを制限され、日本では2010年に製造などが原則禁止されている。(T)