たくましい異国での暮らし 『アルゼンチン、沖縄移民100年の歩み』

 アルゼンチンにおける沖縄移民の歴史を調べるため、久しぶりに移民関係の本を開く。改めて思うのは昔の人たちのたくましさだ。特にアルゼンチンの場合、大半の日本人は集団移民ではなく、地縁や血縁を頼って単身渡航する呼び寄せ・自由移民だった。

 渡航先は日本からみればまさに地球の反対側に位置する。しかも人口の9割以上はヨーロッパ系が占め、アジアの小国・日本にほとんど関心などない土地。仕事はもちろん住む場所も確実に用意されている訳ではない。現在のように事前に、言語や生活文化を調べたり学んだりすることはできず、ぶっつけ本番で言葉が通じない異文化社会に飛び込みしかない。

 実際、20年以上前にアルゼンチンを訪れ日本人移民の方を取材したことがあるが、やはり明るくたくましい人々という印象だった。日本が飛躍的な経済成長を遂げ「世界の大国」と呼ばれる以前は、こんな人たちが多かったのだろうと思った。守るような財産もなければ語学や文化に関する知識もないが、このまま日本にいても明るい未来が開けそうにないから、とにかく外国に出て挑戦してみよう。人間のいるところ本気でぶつかってみれば何とかなる。したたかで、楽天的でたくましい。日本人本来の姿がそこにあるような気がした。(T)

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