グルメを越えて食の原点に立ち返る 外間守善著『沖縄の食文化』

 沖縄学の第一人者と呼ばれた著者の名前とタイトルを組み合わせると、少々堅苦しい内容を想像するが、実際は食にまつわるエッセイに近い。最初に沖縄と周辺地域との交流史に触れているが、平易で読みやすく、沖縄の食文化がいかに成り立ったか概観できる。沖縄の食に関する記述も、少年時代の思い出に費やされている部分が多い。当然、最近はやりの沖縄グルメとはまったく無関係であり、飽食・美食にどっぷり浸った我々現代人の食欲をそそる内容ではない。しかし、本来日常的に口に入れる食事とはこのようだったはずだ。身の回りで手に入る質素な食材を、手間を惜しまず知恵を注ぎ、さまざまな調理法を編み出し少しでも食生活を豊かにしようとした。それで生活はめぐり幸せな思い出を積み重ね世界は循環していた。(T)

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