沖縄の食に込めた思いと手間をさらりと 池澤夏樹・文/垂見健吾・写真『神々の食』
この紹介文は基本的には以前の投稿からほとんど変わっていないが、今回、本書を「沖本屋」で販売できることになったので再掲する。
著者はあとがきで「沖縄は格別にうまいものが獲れるところだというつもりはなかった」と語る。まったく同感である。テレビ番組や雑誌記事で観光地を紹介する場合、グルメに触れないわけにはいかない。視聴者や読者の期待値を上げないと収まりが悪いのだろう、沖縄についても華々しい「美食」の数々にあふれるというように紹介をする。
確かに本土とは文化や歴史が異なるから珍しい食材や調理法はあるが、小さな島ゆえ土地はそう肥えているわけでなく食材も豊かとはいえない。しかし、小さな島であるがゆえ人と食材の距離は近く、貴重な食材を神に感謝しながら丁寧に扱ってきたことは今でも感じとれる。表題の「神々の食」とは、神々からいただいたような美食というよりは、神々に祈りを捧げながらつくる食という意味に近いだろう。本書では、沖縄で扱われる35の食について、作り手が込めた思いと手間をさらり綴る。(T)
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