行間に溢れる破滅の予感 三島由紀夫著『金閣寺』①

 来年は三島由紀夫生誕100年。最近メディアで三島に関する記事を時々見かけることもあって、思い出したように最近『金閣寺』を読み始めた。学生時代、一度手にとった記憶はあるが、途中で読むのをやめた。内容はほとんど印象に残っていない。当時の自分には興味を感じられなかったのだろう。

 しかし、今改めて読むと、三島作品の受け止め方が大きく変わったことを痛感した。彼の文章が醸し出す緊張感に時として息苦しくなりそうだった。直接的な描写をあえて避けたのだろう、それゆえ随所に戦争が色濃い死の影を落とす。主人公が破滅の予感に満ちた道をゆっくりと辿るところが何よりも、読み手の心を揺さぶる。三島が描く何気ない風景も美しくもありながらも、その美しさゆえ破綻の香りが漂う。薄っぺらな美しさにナイフを突き刺し切り裂くような危険をはらむ。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

時の話題

前の記事

シーサーもサンタ姿に