沖縄の聖地とは何か 仲松弥秀著『神と村』②

 「御嶽(うたき)」や「グスク」など沖縄の聖地を訪れてまず戸惑うのは何もないことだ。神社や寺のように目につく建物はもちろん、ご神体やご本尊のようなものも見当たらない。香炉があるくらいだろう。だから、何のためにこの地を聖地としたのか、何を祀るのか想像もつかない。そもそも沖縄で神とは何かも分からない。

 しかし、沖縄各地の御嶽やグスクをめぐって調査を重ねた著者は、本書で簡明な答えを示す。「火の神」など例外はあるものの、沖縄で神とは基本的には「祖霊神」と断言する。人は亡くなれば子孫を守ってくれる守護神になるという考えが根付く。御嶽やグスクは祖先の骨がある墓だった。後世に他に移転させられたり火葬にふされたりしたことはあっても、もともとは人骨があったとしている。沖縄では村の住民が引っ越したり分散したりしても、聖地への信仰を絶やさず崇拝を続ける者が多い理由として、聖地に祀られる神は自分と血のつながりのある祖先という意識のおかげと説明する。 

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