激しい論戦の火花 「お答えいたします」

『岡本太郎の宇宙4 日本の最深部へ』より⑦

 太郎が綴った伝統論や芸術論に対して、鶴見俊輔、唐木順三や木下順二といった当時の文化人や知識人が質問状を送りつける。これに対して太郎が文書で答える。議論がかみ合っているのか、いないのか分からない部分があるものの、それぞれが人生を懸けて醸成した論理や哲学をぶつけ合っていることはひしひしと感じる。人間存在をめぐり深いところで激しい火花が飛び散る。

 近年はSNSの発達で気軽に意見交換や論戦が繰り広げられるものの、ネット上の少ない字数で本書のような深いやりとりをすることはかなり難しいだろう。一方、日本の伝統や文化をやたらと称賛するテレビ番組が目につくようになり、「保守」と呼ばれる政治勢力が各方面で拡大するものの、何が日本本来の伝統や文化なのか議論がすっぱり抜け落ちている。例えば、日本の伝統や文化と呼ばれるものの中には、中国的な要素がかなり入り、明治以降に一般化・庶民化したものも少ないない。また、保守とは何を守ろうとするのか曖昧さが目立つ。議論はふわふわと宙に浮き、感情的な対立ばかりが目立つ。(写真は東京の岡本太郎記念館)

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