ムーチー伝説と琉球王国の裏面

旧暦の12月8日にあたる今日(1月26日)は沖縄ではムーチー(鬼餅)の日。公設市場のアーケード街を歩くと甘い餅や、餅を包む月桃の香りが漂い、スーパーではムーチー用の餅粉などが販売されている。寒さの厳しい折に餅をつくって子供たちの無病息災を願うなどと紹介される。地元のテレビなどでは、子供たちが餅をつくる、何とも微笑ましい画像が使われる。
ムーチーには伝説が伴う。諸説あるが、南城市大里に伝わる伝説は、那覇市首里の金城町で育った兄と妹の物語であり、鬼となり大里の洞窟に住みついた兄を、妹が餅を食べさせ退治する。鬼になった妹を守るために兄が鬼と戦う大ヒットアニメ「鬼滅の刃」とは正反対の結末だが、多くの人に害悪を与える兄に妹が自ら対決するスーリーには「世間様には迷惑をかけられない。身内で解決する」という妙な日本人的リアリティを感じる。いずれにせよ、国王のおひざ元にもかかわらず貧困がはびこっていたことは確か。だから兄も鬼にならざるを得なかった。そう考えるのが自然だろう。
伝説の舞台である金城町は首里城が立つ丘陵地域の南斜面にあたるが、この地域には、身分の違いを理由に、仲を引き裂かれた王女が身を投げたとか、首里城を追い出された王女が出産したとか、悲しげな伝説が残る。首里城の北側は食堂や土産物屋などが並び観光客が頻繁に行き交うものの、南側はほとんど観光客の姿もなくひっそりしている。伝説の兄妹が住んだ場所は首里城から10分ほど下ったところにあり、樹齢200年を超えるといわれるアカギの大木に囲まれていることで知られる。周囲は開発され住宅が立ち並ぶが、この一角だけはアカギを中心に大小の樹木が鬱蒼と茂り独特の雰囲気を醸し出す。

