世界を一変させる放射能事故 『チェルノブイリの祈り ――未来の物語』
(スベトラーナ・アレクシェービッチ著 松本妙子訳)②

本書では原発事故の恐ろしさを改めて感じずにはいられない。1つの施設の事故によって周辺地域数十キロで農作物や水をはじめ、あらゆるものが汚染され人が住めなくなる。楽園だった農村は甚大な影響を受け、短い時間のうちに世界は一変する。しかも、放射能の危険は人間の目に見えないところに潜む。そこに付け込んで為政者たちは無防備な人たちを事態収拾のため事故現場に送り込む。彼らは放射能について情報を与えられていない。村人たちは説明もないまま故郷を追われる一方、残された家畜やペット、農作物は「駆除」され、表土は引き剥がされる。
最初の章「孤独な人間の声」では、通常の服装のまま原発の消火活動にあたった消防隊員とその妻が登場する。がわずか数週間のうちに皮膚が変色し体中いたるところに腫瘍ができる。妻は寄り添いながら日々姿を変える夫を目の当たりにする。夫は亡くなって亜鉛の棺に納められ、妻からは心臓に欠陥と肝硬変を抱えた赤ん坊が生まれ、短い人生を終える。これほど短期間に放射能の犠牲にならなくても、汚染地域に住んでいた村人から現場作業員の家族にまで徐々に異常がみられ不安が湧き上がるが、「科学的な根拠」がないとして為政者とその取り巻きからは黙殺される。

