優しくなれない社会の構造 和田秀樹著『「高齢者ぎらい」という病』①

高齢者は社会のお荷物という雰囲気ができ、社会社会を覆う閉塞感の大きな要因の一つともいわれる。この国では1つの思い込みが固定化すると、社会全体の大きな流れとなり修正することが難しくなる。典型的な例が交通事故だ。若年層だったら全国ニュースにならない事故でも、高齢者ならば大きく取り上げられる。
著者はメディアの取り上げ方の影響が大きいと指摘する。視聴者や読者は「ああ、またお年寄りが事故を起こした起こした」と思う。原因はアクセルとブレーキの踏み間違い。見落としや誤操作など運動機能や認知機能の低下と関係しているのに違いない。いずれにせよ、高齢者特有の原因をにおわせてメディアが伝えるため、「お年寄りは事故を起こしやすい」という印象が一段と強まる。高齢者は免許を返納して車の運転をやめるべきだという声が国民の間に広まる。
この風潮に対して著者は強い疑問を投げかける。統計数字と比べた場合、高齢者の事故ばかり取り上げるメディアは明らかに印象操作といえる。その結果、高齢者に大きな弊害をもたらす。公共交通の手段が限られる地方の高齢者は移動の自由を奪われ、買い物など生活に支障を来たす上、活動範囲や接触する人の数も極端に減って単調で刺激の少ない日々になる。これが認知機能の低下に拍車をかけかねない。さらに著者は、高齢者の交通事故は我が国の薬行政が影響している可能性があると指摘する。

