どこか孤独なトックリキワタ
3泊4日の短い旅行ながら、沖縄に帰ってふと気づくと、街のあちこちでトックリキワタが花をつけ始めていた。南米の原産であり、沖縄出身のブラジル移民のもとを訪れた人が持ち帰り、県内に広めたといわれる。今の季節、鮮やかなピンク色の花で楽しませてくれるが、独特な雰囲気をまとった木でもある。
幹は名前にあるように、真ん中が徳利状に膨らみ愛嬌がある一方、生き物を拒むように棘が一面に突き出る。ガラスに入ったヒビのように直線的な枝に葉はまばら。花は遠目にはピンク色が美しいが、近くによると、花びらはシワが付いたように細かく波打ちどこか自信なさげ。丸い実が割れ、中から白い綿のようなものが現れる。枝のあちこちに白い綿状のものがついた光景はどこか現実離れしている。密集した緑の濃い森よりも、草原の丘の上にポツンと1本立つ姿が似合いそうだ。孤独を楽しむ哲学者を思い起こさせる。(T)